函館から江差へ、木古内で線路が終わる

AIが書いた記事

2025年9月8日、函館から木古内まで乗って、そのまま江差のほうへ抜けた。木古内から先には線路が無い。あるのはバスだけだ。

幹線なので速い

函館から木古内までを走ってるのは道南いさりび鉄道で、もとはJR江差線だ。2016年に北海道新幹線が開業したとき、五稜郭から木古内までが経営分離されて三セクになった。営業キロは37.8kmで旅客駅は12。

三セクと聞くと弱い路線を想像するけど、ここは違う。単線だが電化されていて、青函トンネルへ向かう貨物列車が今も通る。本州と北海道を結ぶ陸路はここしかないので、線路の格としては今も幹線だ。架線がずっと頭の上にあって、設備だけ見ると立派すぎる。

函館を8時57分に出て、木古内が10時8分。38.9kmを1時間11分で、表定速度にすると32km/hほどになる。特別に遅いわけではないんだけど、幹線の設備を見たあとだと物足りない。

この区間には函館バスも走ってる。ただ、速さでは勝負にならない。幹線の線形をそのまま使ってる鉄道と、集落を細かく拾いながら国道を行くバスでは、比べる意味がない。函館から木古内へ行きたいなら鉄道を選ぶ。並行してるからといって、二択になってるわけではない。

キハ40

車両はキハ40。函館駅で待ってたのは1814で、臙脂色に塗られて側面に社名が入ってる。前面の表示は「ワンマン」だ。

この会社はJR北海道からキハ40を9両ほど譲り受けていて、何両かは独自の塗装になっている。観光列車のながまれ海峡号もキハ40だ。エンジンの音は国鉄のままで、走り出すとちゃんとうるさい。

木古内で終わる

木古内は北海道新幹線の駅でもある。そして道南いさりび鉄道はここが終点になる。

問題は、ここで折り返すなら来た意味がほとんど無いことだ。木古内は道南の西半分への入口で、本番はここから先にある。ところが線路はここで切れている。

線路が無い方向

昔はここから2方向へ線路が伸びていた。江差線が江差へ、松前線が松前へ。どちらも今は無い。

松前線は木古内から松前までの50.8kmで、1988年2月1日に廃止された。江差線の木古内から江差までは42.1kmで、2014年5月12日。木古内から出ていた2本の枝が、26年の間隔をあけて両方とも消えた。残ったのは函館へ戻る1本と、あとから来た新幹線だけだ。

木古内駅に置かれた古い駅名標とガラスケースのサボ
木古内駅の中に置かれていた古い駅名標。奥のケースには松前行と江差行のサボが並んでいる。どちらも今は無い行き先だ。

列車を降りてバスを待つ間、駅の中に古い駅名標とサボが並んでいるのを見た。松前行、江差行、函館ー松前。本州へ向かう方向は新幹線が引き継いでいるので、この駅が細ったわけではない。消えたのは西と北へ伸びていた枝のほうで、そっちだけがガラスケースに入っている。

上の駅名標も現役の案内板ではない。隣の駅としてさつかりとしりうちが書かれているけど、知内は2014年3月15日に駅として廃止されて信号場になっている。つまりこの板は、少なくともそれより前のものだ。書いてある駅名から年代が絞れるのは、この手の展示の面白いところだと思う。

なぜ線路が残っているのか

枝が2本とも消えたのに、函館から木古内までは残った。旅客の本数だけ見れば、ここも十分に細い。

手掛かりは走っているものにある。北海道と本州を結ぶ貨物列車がここを通る。数字にするともっと露骨で、この会社の収入の9割ほどは、貨物列車が線路を使うことで入ってくる貨物調整金だ⁽²⁾。旅客運賃は残りの1割ということになる。

開業後の検証でも、全国の物流ネットワークを構成している点がこの路線の公共性として挙げられている⁽²⁾。旅客の数だけでこの線路の意味を測ることはできない、ということだ。

だから乗っていると変な気分になる。設備は幹線、走ってる列車は2両にも満たない気動車。この線路が本当に運んでいるものは、自分が乗っている列車ではない。

バスが跡をなぞる

で、その2方向をいま担っているのが函館バスだ。

木古内駅前のバス停に停まる函館バスの車両
木古内駅前ののりば。この便は521系統で、知内出張所と福島と松城を経て松前出張所まで行く。松前線が消えた方向だ。

江差方面は631系統と632系統と634系統で、旧江差線に並行する道道をなぞって木古内駅前と江差を結んでいる。本数は平日で6往復ほど。廃止時の江差線も6往復だったので、本数はそのまま引き継がれた形になる⁽¹⁾。松前方面は写真の521系統のように、知内と福島と松城を経て松前へ向かう。

つまりここでのバスは、鉄道の競争相手ではなく後任だ。鉄道が残っている函館側では鉄道が速くて当然で、バスを選ぶ理由はほとんど無い。バスが要るのは、鉄道が消えたあとの区間だ。同じ「並行するバス」でも、意味がまるで違う。

乗り換えた先

木古内駅前でバスを撮ったのが11時3分。写真に写ってるのは松前行きだけど、乗ったのは江差の方向だ。

列車が着いたのが10時8分で、バスが出たのが11時28分。1時間20分の待ちがある。代替バスの区間ではこの空きがだいたい発生する。そこから44.9kmを1時間22分乗って、上ノ国のあたりで降りた。

その先は歩いた。3.0kmを47分。次のバスを待つより歩いたほうが早い距離だったので、江差の中心まではそのまま足で入っている。

函館バスの車内から見た沿線の風景
木古内から先、バスの車内から。線路が無くなっても集落は続く。

線路が無くなっても集落は続いていて、バスはそこを細かく拾っていく。鉄道が海沿いを押し通していたのに対して、こっちは山側へ入っていく。廃線跡をなぞる路線に乗ると、鉄道がどこを通っていたかが窓から見えることがある。それを見にいくのがこの区間の楽しみ方だと思う。

新幹線で来る手もある

ついでに書いておくと、木古内は北海道新幹線の駅でもある。だから江差や松前へ行きたいだけなら、新幹線で木古内まで来てバスに乗り継ぐ形もありうる。

時間で言えばたぶんそれが最速だ。ただ、在来線に乗りに来ているので選べない。速い経路と、乗りたい経路は別物だ。この日も、速さだけなら別の組み方があったと思う。

木古内で終わりにしない

まとめると、この日の移動はこういう形だった。函館から木古内までは鉄道が速いので鉄道で行く。木古内から先は鉄道が無いのでバスに乗る。そしてバスに乗るのも普通に楽しい。鉄道の代わりに仕方なく乗っているわけではなくて、路線図を眺めて次にどれへ乗るか決めるところからが面白い。

そしてこの日のあとも同じことが続いて、結局この旅は線路が無いところばかりを日本海側に沿って北上する形になった。木古内でのバス乗り換えは、その最初の1回だったことになる。

そういう回り方をしていると、木古内のような駅の見え方が変わる。ここは鉄道の終点ではあるけれど、道はまだ先へ続いていて、バスがその先を引き受けている。終点は路線の都合であって、街の都合ではない。

廃止された路線の代替バスは、時刻表を調べるのが面倒で本数も少ない。それでも乗る価値はあると思う。線路が消えたあとに何が残って何が残らなかったのかは、その道を通らないと分からない。